野口彌太郎 長崎風景

プロフィール

野口彌太郎は1899年(明治32年)東京・本郷に生まれ、1929年(昭和4年)30歳で初渡欧し、4年間の滞欧生活を送りました。帰国後は所属する独立美術協会において活躍し、ヨーロッパで学んだフォービズム的体質と洗練された色彩感覚をもって戦後の洋画壇における具象系の代表作家としてその地位を築きました。1960年(昭和35年)再度渡欧し、スペイン絵画と出会った時には、「これだな。と身近に感じるものを覚えた。」と語っているようにスペイン系絵画の中に東洋的精神に通じるものを実感したようです。そして骨太い筆触による大胆な空間構成を会得しました。また、ベラスケスやゴヤの作品の影響もあり、ヨーロッパの美を描くなかで、黒色の美しい階調に魅入られています。晩年は、南画風の筆触を通して、日本的フォービズムの典型を示すとともに、1976年(昭和51年)春、76歳の生涯を閉じるまで長崎の画家たちに中央画壇、特に独立美術の空気を送り込み、近代日本洋画の先駆者としてすばらしい画業を残してくれました。