山本大慈 孔雀

プロフィール

山本大慈(1908~1987)は福井県美浜町に生まれ、京都で日本画を学んだのち、院展作家の北野恒富、また同じく院展作家である小林古径に師事した。19歳のとき神戸に移り、そのまま居を神戸に定めて画業一筋に打ち込み、花鳥画を得意とする日本画家として活躍をした。福井県では唯一人の日本美術院所属の作家で、日本美術院「甲辰会」の運営委員として後進の指導、育成にあたった。
本画は2羽の羽根をたたんだ雄の孔雀が上下に互い違いで配置され、背景の金箔地が彼らを華麗に際立たせている。絵の具の塗りは厚く、様々な色に溢れ、筆遣いはダイナミックである。山本大慈は昭和8年、25歳のとき再興院展で初入選を果たし、その後は院展のみに出展をしているが、一時期50代半ばから後半にかけて孔雀を扱った作品を多く描いている。その頃の出品作品を列挙すると以下の通りである。

再興47回院展
(S37)
『孔翠』 55歳
再興48回院展
(S38)
『孔雀』 56歳
再興49回院展
(S39)
『孔雀』 57歳
再興50回院展
(S40)
『花』 58歳
再興51回院展
(S41)
『孔雀』 59歳
再興52回院展
(S42)
『燦』 60歳(内容:デザイン的に縦に配置された孔雀の群れ)
再興53回院展
(S43)
『孔雀』 61歳
再興54回院展
(S44)
『霧』 62歳 (内容:秋草)
再興55回院展
(S45)
『秋盡』 63歳 (内容:菊の花)
再興57回院展
(S47)
『牡丹島』 65歳 (内容:牡丹の花)

 

同じ画題でありながら、あるときはデザイン的に孔雀を配置し、あるときは数を変え、様々な試みをしている。本作品はそのなかでも作者57歳、再興49回院展のときのもので、その4年後に描かれた孔雀の絵では上部に配置された孔雀のみをさらに深めて描く試みがされている。
当館ですでに所蔵している再興61回院展入選作『華』(作者68歳)や、再興66回院展奨励賞受賞作『暁闇』(作者73歳)はその後の作品であるが、孔雀を描いていたときのダイナミックさや力強い表現は影を潜め、島根県の大根島に取材した牡丹の花が全面に漂うような優美さで表現されている。それらに今回の作品が加わることによって、作者が生涯あらゆる表現方法を追い求めて花鳥画の可能性を探り続けたことを知ることができるだろう。